トレイルランニング
![]() トレイルランニング(英: Trail running)およびマウンテンランニング(英: Mountain running)は、陸上競技の一種で、様々な種類の地形(砂地、土の道、林道、一人しか通り抜けられない森の小道、雪道等)や環境(山、森林、平原、砂漠等)で行われるスポーツである。トレランやトレイルランと略される。 概要トレイルランニングは、不整地を走るランニング[要曖昧さ回避]スポーツで、日本では以前から登山(または山岳)マラソンとして同様のものが存在していた。1970年前後にアメリカを発祥とし、欧米では盛んだったが、2000年代初頭まで日本ではあまり知られていなかった。しかし、マラソンブームや登山ブームの波に乗って、両者の要素を併せ持つ「トレイルランニング」が知られるようになった。 大会では、コースは森林、山岳地帯、河川などの自然地形を利用して設定される。そのため、馴染みのない地形や天候にも対応する必要がある。また、フルマラソン以上の長距離を走ったり、種目によっては1000m近い高低差があるコースを走ったりすることもある。日本陸上競技連盟の示すルールブック[1]には、コースの一部が舗装(アスファルト、コンクリート、砕石等)されていても構わないものの、最小限の距離に抑えられている必要があり、既存の登山道や林道や小道をできるだけ使用すると定められている。また、コース上には競技者が地図を読むような特別な技術を必要とせず、容易に認識できる標識を設置しなければならない。 競技を統括する国際競技団体(IF)はワールドアスレティックスで、国内競技団体(NF)は日本陸上競技連盟。また、トレイルランニングに関連する団体として、世界マウンテンランニング協会(WMRA)、国際トレイルランニング協会(ITRA)、国際ウルトラランナーズ協会(IAU)がある。国内では日本トレイルランニング協会が活動している。そのほかに、山を走るマナーや大会開催ルールなどを考えるため日本トレイルランナーズ協会も設立されている。 日本においては様々な経緯から、山を走る競技全般をトレイルランニングと表現することが多くみられるため、注意が必要である。 歴史
日本日本では、1913年に静岡県御殿場市で開催された富士登山競走や1947年の第2回国民体育大会(石川国体)の縦走競技(パックに荷重を背負い、標高差の大きい自然の山岳を走る競技)など「山岳マラソン」や「登山競争」と呼ばれる文化が早期から存在していた[2]。 1990年に山田昇記念杯登山競争大会が、国体と同様の縦走形式でおこなわれ、1993年に日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)が開催されると、現在の国内トレイルランニングの原点となっていった。 1992年、雑誌「ランナーズ」に世界最古の100マイルレース「ウェスタンステイツ100マイル」のレポート記事が掲載され、日本のメディアで初めて100マイルレースの模様が紹介された。 2000 年代以降に「トレイルランニング」の名称を冠した大会開催が急増する中、2005年の雑誌「ターザン」においてプロトレイルランナーの石川弘樹が『トレイルラン』という言葉を初めて日本のメディアで紹介した。さらに2009年におこなわれた海外レースでの鏑木毅の活躍が、翌年にテレビで放映されたことで知名度が高まり、トレイルランニングが一般化していった。 トレイルランニングを健全な市民スポーツとして広く普及させるために、トレイルランナー自身によって組織された日本トレイルランナーズ協会が2015年に設立された。 一財)日本トレイルランニング協会(トレランJAPAN)は中央競技団体としての役割を果たし、トレイルランニングの発展と山岳環境の保護及び啓発活動を目的として2016年に設立され、2019年にはJAAF(日本陸上競技連盟)のテクニカルパートナーと認められ活動している。 競技人口トレランの定義は広範であり、またマラソン等との利用者との区分けが困難であることから、野外を含めたレジャー・スポーツ人口を推計している『レジャー白書』(日本生産性本部)や『スポーツ白書』(笹川スポーツ財団)において、トレイルランニングという項目は存在しない[3]。しかし、商業的・地域 振興的な目的から行われたトレイルランナーの人口調査は幾つか個別に存在している。中でも、日本能率協会総合研究所によって2014年に大々的な推計調査が実施されている。これによれば 2014年の時点で、日本におけるランナー人口は19.8万人と推計される[4]。 日本においては2000年代にトレイルランナーが急増したとされる。その背景としては、世界的な大会開催等の影響を受けて日本でも大会や情報が増加し、トレイルランナーによるコミュニティも増え、競技スポーツとしての認知・普及 が進んだこと、マラソン等のランニングブームに後押しされたこと、中高年を含めた健康・体力維持や自然志向 が反映されたことが指摘されている[3]。 競技種目2021年から、ワールドアスレティックス(WA)、国際トレイルランニング協会(ITRA)、国際マウンテンランニング協会(WMRA)、国際ウルトラランナーズ協会(IAU)が連携して、新たな時代の到来と、山岳スポーツを一つにまとめたいという願いを示す形としてマウンテンランニング&トレイルランニング世界選手権(World Mountain & Trail Running Championships)を開催するようになった。これは2年に一度開催され、世界60カ国以上から多数の選手が競い合い、世界一を決める祭典である。 2024年から国際トレイルランニング協会によりアジア地域で初めてとなる、アジア太平洋トレイルランニング選手権(Asia Pacific Trail Running Championship)が開催されている[5]。 ここでは、世界選手権でも採用される、代表的な4つの競技を紹介する。
国際大会関係世界選手権大会への派遣において、日本代表は、日本陸上競技連盟によって編成される国家代表としての実績を持っています。また、アジア太平洋選手権は日本トレイルランニング協会によって編成されています。 世界選手権大会の代表選考選考基準は、直近の世界選手権及びアジア太平洋選手と国内でおこなわれる選考大会の上位入賞者から「世界選手権でメダルを獲得、または入賞が期待できる選手」というものである。日本陸連が派遣する。 アジア太平洋選手権の代表選考現在の選考基準では、大会が指定する競技種目のITRAランキングにおいて、日本人選手の中で最上位に位置し、かつ全体で30位以内に入る選手が選考対象となります。この基準により「アジア太平洋選手権でメダルを獲得、または入賞が期待できる選手」が選ばれます。日本トレイルランニング協会が派遣する。 装備
トレイルランニングは、道路を走るマラソンと比べて地形の変化が大きく、危険性が高いため、適切な装備を準備することが重要である。以下に、トレイルランニングに必要な装備をまとめる。 1.トレイルランニングシューズ - トレイルランニングシューズは、スピードや快適性よりも、トレイルの不規則な地形に対応できるように作られたものである。足裏をしっかりサポートし、グリップ性に優れることが求められる。 2.ランニングウェア - トレイルランニングウェアは、吸汗速乾性に優れている。裾を引っ掛けて転ぶ危険があるので、パンツは短めかタイトなもの、シャツも肘の部分が伸縮性があり身体の動きを妨げないものなど、トレイルランニング向けのものを選ぶと良い。 3.水筒類 - 山に入る、長時間のランニングをする際は、必ず水分補給ができるものを持って行く。携帯型の水筒に類するものが多数あり、トレイルランニング用の小型のバックパックで持っていく人が多く、水分補給はこまめに行うようにする。 4.レインウエア - 天候が急に悪くなることもあり、トレイルランナーは雨具としてレインウエア上下を持参しておく必要がある。また、暑い季節に濡れた状態で過ごすことは、身体の冷やしすぎや体調不良の原因となるため、レインウエアは持って行くことが重要である。 5.ヘッドランプ - トレイルランニングを行う場合は、ヘッドランプが必要である。トレイルランニングコースは森林部では日没前から暗くなることが想定され、山間エリアであり林道はライトアップされていないことが多い。夜間では自分のペースを取り、足元をしっかり確認しながら進むために必要なアイテムである。 6.GPSウォッチ - 走る時には自分の位置や進んだ距離、走りの速度などを把握する必要があるため、GPS機能付きのウォッチがあると便利である。 以上が、トレイルランニングに必要な装備の一部である。トレイルランニングは、自然の中で行うアクティビティの一つであるが、適切な装備を準備することで、より安全かつ快適に楽しめるようになる。 7. 下記は必要とされるその他の装備。
必須ではないが、下記装備なども持って行く人も多い。
20cm程度以下の積雪であれば、より厚着のウェアと軽アイゼン(チェーンアイゼン)などが追加になる。積雪量が多すぎる場合は入山を控える。 なお、黎明期では「ランニング登山」と称して、通常登山靴や、登山用の杖などを装備して登るような山を、Tシャツに短パン、スパッツ、ランニング・シューズといったランニングのスタイルで入山して走っていた。 著名な選手
安全対策一般登山道で楽しむことが多く、最終的な安全の確保はランナーの自己責任に任されることとなる。山に入る際は、登山届けを提出したり友人や知人に行き先を告げておき、十分な装備と飲食物を用意することが重要である。 激しい運動は、マラソン同様に心臓発作のリスクがある。また、登山道からの滑落[9]や落石などの危険もある。まれに、クマなどの野生動物に襲われる例もあるため、注意が必要である[10]。 大会に出場する際は、健康診断を受けておき、体調管理に十分気を配り、無理をせずに参加することが大切である。大会によっては体調チェックシートなどの提出が求められる場合もある。 日本における普及状況と課題大会を開催するにあたっては、登山者やトレッキング愛好者から拒絶反応を受けることも過去にはあったが、近年ではトレランと登山の両方を楽しむ愛好家が増加しており、地域振興にも利用されるなど、良質のアウトドアスポーツとして認知されている。過去に箱根で実施されたレースは、登山者からのクレームもなく、コースもほとんど荒れなかったのにも関わらず、環境省箱根自然環境事務所が「箱根の歩道(登山道)利用に関するガイドライン」を元に大会開催の自粛を要請したため、2007年に第1回開催を果たしたのみでその後は開催不可能になるなど、世間の理解を得られない時代もあった[11]。 大会がおこなわれることで、周辺の植生に悪影響を及ぼすはずだと考える地元関係者も存在するが、近年では国立公園の一部で歩行区間を設ける動きや、主催者により登山道が保全され、安全かつ安心して通行が出来るようになるなど、大会主催者や愛好者の努力が行われている。 重大な事故が発生した場合、後援団体やスポンサーによっては、これをマイナス要素と受け止め、次年度以降の支援を停止することもある[12]。大会主催者は国際トレイルランニング協会(ITRA)が示すガイドラインに準じて運営をすることに努める必要がある。 トレイルランニングの普及には、安全面でのルール作り、施設整備、組織体制の構築などの課題に取り組む必要があります。自然環境との共生を図りつつ、次世代にも継承できる持続可能な活動として定着させることが重要です[13]。 主な大会世界選手権
アジア選手権
国際大会
国内大会
テレビ番組
脚注注釈出典
関連項目外部リンク |